コスモス
ミリアム・セイデル
宮森敬子のインスタレーション、コスモスでは、まるで私たちが子供部屋に入ったかのようだ。ベッド、デスク、ピアノが、ギャラリーの華やかな羽目板、モールディング、アーチ状の窓と共に、このイメージの空間に私たちを呼び込む。しかし、アーティストはさらに手招きする。壁が崩れ落ち、四方に夜空が見える。我々は、地球と星の夢、子供のピアノで弾かれる球体の音楽に招かれている。
コスモス 「瞑想的空間」展 2007年 包まれた各種オブジェクト、和紙、木炭、レジン
オブジェと窓を覆う白い紙、そこには宮森が樹皮から採集した拓の跡が記されている。その全面を覆う印が空間を統一し、それは、草間彌生が強烈なドットでオブジェクトを覆ったことを思い起こさせる。宮森にとって、それらは、樹々の淡々とした、されど癒しのエネルギーに接し、繋がる装置のようなものも創造する。以前、彼女は根がついたままの巨大な樹の幹を取り出して展示した。それは、ここに展示している古いタイプライターを収めたアクリルの立方体にも関連があるが、それよりもはるかに大きく、そこには死した樹が、ほこりのない透明な結晶の世界に閉じ込められた。
白い紙の上に記された木の痕跡は、保存された記憶のようだ。第52回ヴェネツィアビエンナーレ(2007)で日本を代表した岡部昌夫も、長期的なプロジェクトとして同じような効果を持って、フロッタージュを使用し、古い広島駅の敷石から拓を採集した。まるで霊を表すようなこの拓は、第二次世界大戦戦後に、広島や他の土地での、想像を絶する体験に答える形で出現した、過激なパフォーマンススタイルで使用される舞踏集団の白塗り顔をも彷彿とさせる。宮森もまた、想像を絶する状況の中で彼女の作品を制作している。彼女が訪れた中国の731部隊の収容施設跡で中国人捕虜に対してかつて日本兵が行った実験の事実は、彼女の芸術制作の方向性を変えるものだった。ここでは、樹々が木安全と癒しの試金石となり、子供が宇宙への旅へ出ることを想うことができるのである。
ミリアム・サイデル