日々の樹拓シリーズ
Part 1 I am Still In New York (2020)
Part 2 I am Still In Japan (2021)
Part 3 TIME (2021 ~)
Part I I am Still in New York
(私はまだニューヨークにいる) 2020.4.20 - 2020.8.22 (125days)
I Am Still In New York は、コロナウイルスによるパンデミックの時期、その苦境からの回復をテーマにしたコレクションで、アートプロジェクトです。
このシリーズで、私は毎日、近所にある樹木の拓本を採集し、都市における人間と自然の間の二つの関係を観察しました。
最初の拓本は、2020年4月20日、私が日本に帰国する予定だった日、ニューヨークがロックダウンされて、私の飛行機がキャンセルになったことから始まりました。
パンデミックに対する街の反応が激しくなる中、私は近所の樹木が以前と同じように存在し、鳥が以前と同じように鳴き続けていることに気づき、社会と自然の対比に気付いたのです。
道端に
美しい家の前に
ゴミ箱の中に
人と一緒に
ひとりで
金属の柵を突き抜けて
場所場所での
近所の
樹々の思い出
それらが一つ一つ
透明な箱に収まっている
- 宮森敬子
日々採集された樹拓和紙は、天候がコード化されたガラスケースに収められています。晴れの日銀)、曇の日(灰)、雨の日(黒)のようになっています。
また、それぞれの箱に刻まれた独自の通し番号は、未知の場所や木々、記憶の痕跡(暗号)となっています。
私の楽観主義は、シンプルで楽しい作品のタイトルにも表れています。
I Am Still In New York (私はまだニューヨークにいる) はガラスケースを含めて、すべて私の手作りで、人の不完全さ、壊れやすさをも表しています。
このコレクションには2つと同じものがありません。
Part 2 I am Still in Japan
(私はまだ日本にいる) 2021.1.14 - 2021. 4.3 (81 days)
コロナによる渡航制限が解除され、アーティストはニューヨークから両親の介護のためにようやく横浜に行けるようになった。ところが、日本滞在中に新たな渡航禁止令がでてしまったために、今度は日本からアメリカに帰れなくなってしまった。
日本滞在が伸びたことを受けて、宮森は、97歳の父親を介護施設から毎日散歩に連れて行くとき、彼と共に樹拓を採集するという新しい習慣を作った。
このシリーズは、2021年1月14日(作家の誕生日)から、ニューヨークの自宅とスタジオに戻る前日の4月3日までの81日間に渡って制作された。
宮森の過去、現在、未来に触れながら詩的に時を刻むこのプロジェクトは、古い記憶を呼び起こす過程で、新しい記憶を創造したのである。
ー ポール・ラスター (アートライター・ニューヨーク)
Part 3 TIME
2021.10.11 ~ current
Timeは、宮森が97歳になる父親と一緒に朝の散歩をする様子を記録した、インスタグラム(SNS・ソーシャルメディア)ベースのプロ ジェクトである。
プロジェクトは、宮森の父が97歳でガンの手術することになり、その結果がどうなるかわからない状態ではじまった。
以下、作家の言葉
「2021年の10月1日から、1日2枚、同じ箇所で小さな樹皮の拓(rubbing)を採集しています。2枚のうち1枚を選びガラスの箱に納めて行ったものが、TIMEという作品です。ガラス箱も私が手作りしていて、晴れの日は銀、雨の日は黒(酸化)、曇りは灰色、雪の日は白とハンダ部分の色を変えています。
ガラス箱に入って並べられた樹拓の中から、好きな作品(部分)を人に所有してもらい、その部分に(同じ日に採集した)スペア樹拓を置くことで作品は変化して行きます。誰かが所有している部分は青いガラス箱となって展示され、全ての樹拓が青いガラス箱に入ったら作品は終了します。」
作家は2枚の樹拓を同じ箇所で採集し、同じ通し番号をつけ、そのうちの一枚を「選択」して、手製のガラスケースに収めて行った。その時の選択はいつも瞬時に決まる。このケースに入ったグループをAとすると、選ばれなかったグループBは手元に残る。
毎日撮影される樹拓写真の背景には、宮森の父親や、母親、またプロジェクト期間中に亡くなったセラピーキャットのマルの姿がしばしば写っている。
TIMEは現在進行形である。それは人と人との最後の日々を視覚的に記憶に残す作品となるだろう。
インスタグラムに記録された日々の樹拓採集 https://www.instagram.com/keiko_miyamori/