人生の時間を巻き戻す
2019
「人生の時間を巻き戻す」は 2019年、 BankART1929の冬季レジデンスプログラムにおいて、 宮森敬子、ダンサー・振付師 おどるなつこ、アーティスト・ダンサーのリン・チャーチル、三人の女性コラボレーションとして行われた。
「記憶」 に関わるディスカッションで、三人に共通する、子供に関するそれぞれの辛い思い出が共有されることになった。 宮森は望んだ子供を持つことができなかった。おどるなつこは彼女の友人の娘を交通事故で失い、自分の娘が健康であることにある罪悪感を感じていた。リン・チャーチルは交通事故で当時8歳の子供を失いかけ、そのことで、当時の夫に長い期間、精神的に圧力をかけ続けられた。
パフォーマンスは、これらの喪失の感覚を、普遍的な体験の断片として、具体的な記憶を集め、表現し、解放する、という目的を持って構成された。 デスカッションで録音された会話を聴きながら、宮森は、キャンバス上にそれらの記憶を描画として描き記した。 その後、おどるなつこが友人親子と最後にあった井の頭公園や、宮森の人生に関わる場所を再訪するフィールドワークで採集した樹拓の施された和紙が、ドローイングを包むように重ねられていった。
パフォーマンスは、3人のアーティストの死体という状態で始まった。 その後、3人の女性は自分の人生の体験を巻き戻してゆき、再びそれらを思い、解放するかのように進行してゆく。、最後はそれぞれが世に生まれた時のように、創世記の瞬間に戻るが如くのシーンとなる。
3人の別々でユニークな人生が、1つの誕生の瞬間として融合する。 記憶は一掃され、純粋な存在として世界に再び入り、未知の運命を迎える。